結論から言えば、建設コンサルタントでは学部卒と院卒で待遇面やキャリアに大きな違いはありません。
昇進や配属、給与体系において学歴による明確な区別はなく、実力次第で十分に活躍できる業界といえます。
実際、大手建設コンサルタント各社の採用実績を見ると、学部卒の採用数は年々増加傾向にあります。
その背景には、即戦力となる人材の確保や、多様な視点を持つ技術者への需要の高まりがあります。

「院卒が多い業界だから、学部卒では不利なのでは?」
(学生時のおさっちょ。も悩んでたな)
という不安を抱える方も多いかもしれません。
しかし、建設コンサルタントでは、学歴よりも個人の能力や意欲、そして業務への適性が重視されます。

大手建設コンサルタントでも、学部卒で出世している上司も多くいたんじゃ。というか、誰も気にしていなかった
本記事では、建設コンサルタントにおける学部卒と院卒の違いについて、年収やキャリアパス、仕事内容まで、実際に従事してきた筆者の経験から詳しく解説します。
これから就職を考える方の判断材料として、現場の実態をお伝えしていきます。
建設コンサルタントの学部卒と院卒の年収比較

建設コンサルタントの給与体系は、基本的に学歴ではなく年次や資格、実績に応じて決定されます。
大手建設コンサルタントの給与水準と、実際の評価のされ方を詳しく見ていきましょう。
- 建設コンサルタントの学部卒と院卒の年収比較
- 大手建設コンサルタントの学部卒採用状況
- 学部卒技術者の具体的な仕事内容と残業実態
- 建設コンサルタントで学部卒に必要な資格と取得時期
- 建設コンサルタントに向いている人・向いていない人
- 学部卒から管理職までのキャリアパス
学部卒と院卒の初任給の違い
建設コンサルタントの初任給は、大手各社の採用情報によると、学部卒と院卒で若干の差があります。
下記は代表企業の初任給の例です。
企業名 | 学部卒 | 修士了 | 差額 |
---|---|---|---|
日本工営 | 259,000円 | 270,800円 | 11,800円 |
パシフィックコンサルタンツ | 265,000円 | 275,000円 | 10,000円 |
建設技術研究所 | 281,000円 | 290,000円 | 9,000円 |
出典:各企業のHP(企業名をクリックすると該当ページに飛べます!)
この差は、修士課程での2年間の専門研究による即戦力度を考慮したものです。
しかし、入社後は学歴よりも実務経験や資格取得、業務成果による評価が重視されます。
入社後の昇給は、定期昇給と業績評価の組み合わせで決定されます。定期昇給は年1回、人事評価による査定は半期ごとに実施されるのが一般的です。

とはいえ5年目ぐらいまではみんな勉強段階!あまり差はつかなかったな。それでも残業が多い分、給料は高い!
評価対象となるのは、担当案件の完遂度、技術力の向上、後輩の指導実績などです。
年収アップの鍵となる資格取得
建設コンサルタントでは、技術士やRCCMといった資格の取得が、年収アップの超重要な鍵となります。
RCCMは実務経験7年以上(院卒なら5年以上)で受験資格を得られ、技術士は技術士補の資格を経て実務経験4年以上(院卒なら2年以上)で受験できます。
特に技術士資格の取得は、学歴に関係なく評価される重要な指標です。

実際に私がいた企業では技術士取得一時金50万円+月給2万円upという破格の手当てがありました!夢がありますね
資格保有者は案件の管理技術者として従事できるため重宝され、より上位の業務を担当することができます。
建設コンサルタントの長期的な収入の決定要因
入社5年目以降(目安ですが)は、プロジェクトでの役割や技術力が評価の中心となるため、学部卒と院卒の給与差はほとんどなくなります。
担当するプロジェクトの特性も重要な要素です。たとえば、国土交通省の案件は安定した利益率が期待でき、賞与に反映されやすい傾向にあります。
また、専門分野での実績作りや、プロジェクトリーダーとしての経験も、着実なキャリアアップにつながります。
意欲的に実務経験を積み、着実に資格取得を目指すことで、学部卒でも十分なキャリアアップが可能な業界といえます。
大手建設コンサルタントの学部卒採用状況

建設コンサルタント業界では、従来「院卒中心」というイメージがありましたが、近年は学部卒の採用を積極的に行う企業が増えています
実際の採用状況と、その背景にある業界のニーズを見ていきましょう。
- 建設コンサルタントの学部卒と院卒の年収比較
- 大手建設コンサルタントの学部卒採用状況
- 学部卒技術者の具体的な仕事内容と残業実態
- 建設コンサルタントで学部卒に必要な資格と取得時期
- 建設コンサルタントに向いている人・向いていない人
- 学部卒から管理職までのキャリアパス
学部卒採用の現状と傾向
建設コンサルタント業界では、若手技術者の確保が重要な経営課題となっています。
建設業全体に言えることですが、高度経済成長期に建設された何十万もの建設物が一気に更新期を迎えているので、、、、人手不足!!
※詳しくはコチラ!

(出典:国土交通省「建設後50年以上経過する社会資本の割合」)
大手各社では、早期から実務経験を積める学部卒人材の採用を重視する傾向が強まっています。
採用時の面接では、学歴よりも土木分野への関心度や、コミュニケーション能力が重視されます。

最終面接で、「好きな橋はどこの何という橋ですか?なんで好きなの?」なんて聞かれたのはいい思い出です(笑)
そのため、学部卒・院卒それぞれの特性を活かした採用が行われているのが現状です。
入社後の配属と教育体制
大手建設コンサルタントでは、学部卒・院卒の区別なく、本人の希望と適性を考慮した配属が行われます。(※ここは運要素もあります)
入社後は、OJTを中心とした実践的な教育プログラムが用意されており、経験豊富な先輩社員による指導体制が整っています。
新入社員研修では、CADの基本操作や報告書作成など、実務に必要な基礎スキルを習得します。
その後、先輩社員の補助業務から始めて、徐々に責任のある業務を任されるようになります。
求められる人物像と採用のポイント
建設コンサルタントでは、以下のような資質を持つ人材を求めています。
- 長期的な視点でインフラ整備に携わる意欲
- 地域社会への貢献に興味がある人材
- チームでの業務遂行のため、コミュニケーション能力
上記以外には、業務の性質上、一つの案件に腰を据えて取り組む姿勢や、継続的に学び続ける意欲も重視されます。
特に学部卒の場合、この「学び続ける姿勢」が評価のポイントとなります。
入社後の成長意欲を面接でしっかりとアピールすることが、採用成功のカギとなるでしょう。
学部卒技術者の具体的な仕事内容と残業実態

建設コンサルタントの仕事内容は、学部卒・院卒で大きな違いはありません。入社後の成長に合わせて、段階的により責任のある業務を任されていきます。
実際の業務内容と働き方の実態を見ていきましょう。
- 建設コンサルタントの学部卒と院卒の年収比較
- 大手建設コンサルタントの学部卒採用状況
- 学部卒技術者の具体的な仕事内容と残業実態
- 建設コンサルタントで学部卒に必要な資格と取得時期
- 建設コンサルタントに向いている人・向いていない人
- 学部卒から管理職までのキャリアパス
入社1~3年目の主な業務内容
入社直後は、先輩技術者の指導のもと、基礎的な業務からスタートします。
主な業務は現地調査の補助や、基本的な図面作成、資料収集などです。基礎的な解析業務も部署によっては担当していきます。
この時期は、業務の流れを理解し、実務経験を着実に積み重ねることが重要です。

特に発注者と進捗や業務方向性を常に共有しながら行う能力が非常に大事!!
現地調査では測量データの収集や写真撮影を行い、CADを使用して設計図面の作成補助を担当します。また、関連する法規や基準書の確認、協議用資料の作成なども行います。
これらの業務を通じて、建設コンサルタントの基礎となるスキルを身につけていきます。
実際の残業時間と繁忙期
建設コンサルタントの残業時間は、案件の進捗状況や時期によって変動があります。
一般的に、成果品の納期が集中する年度末(2~3月)は繁忙期となります。
一方で、最近では働き方改革の影響もあり、残業時間の管理は以前より厳格になっています。
月平均の残業時間は、繁忙期で40~50時間程度、通常期で20~30時間程度です。
※あくまで目安。会社、部署により全く異なる
近年は業務の平準化や効率化が進められ、極端な残業は減少傾向にあります。休日出勤が必要な場合は、基本的に代休取得が推奨されています。
配属先による業務の違い
道路、河川、構造物など、配属される部署によって具体的な業務内容は異なります。
しかし、どの部署でも基本的な流れは共通しています。
発注者との打ち合わせ、現地調査、設計検討、図面作成、報告書作成という一連の作業を、チームの一員として担当します。
特に計画系の部署では住民説明会への参加機会もあり、コミュニケーション能力を活かせる場面も多くあります。

計画系の部署はディベロッパーのような立ち回りでまちづくりに関わることもあるようじゃのぉ
また、詳細設計を担当する部署では、より専門的な技術力が求められます。このように、配属先によって必要なスキルや業務の特性は様々です。
建設コンサルタントで学部卒に必要な資格と取得時期

建設コンサルタントでは、実務経験を積みながら段階的に資格を取得していくのが一般的です。
学部卒でも問題なく取得することができるので、就職試験時も就職後も着実にキャリアを構築できます。
資格取得の一般的なステップと、それぞれの意義を解説します。
- 建設コンサルタントの学部卒と院卒の年収比較
- 大手建設コンサルタントの学部卒採用状況
- 学部卒技術者の具体的な仕事内容と残業実態
- 建設コンサルタントで学部卒に必要な資格と取得時期
- 建設コンサルタントに向いている人・向いていない人
- 学部卒から管理職までのキャリアパス
入社時に保有しておきたい資格
建設コンサルタントへの就職時に、必ずしも資格は必要ありません。
ただし、下記の基礎的な資格を在学中に取得していると、評価も高く実務をスムーズに進めやすくなります。
・技術士補(JABEE適用大学の場合そちらでOK)
・測量士補
・TOEIC、英検(海外業務が多い企業を希望の場合)
特におすすめする技術士補は、技術士試験の第一次試験に合格することで取得できます。
この資格は、将来の技術士取得に向けた第一歩となるため、可能であれば在学中や入社直後の取得を目指すことをお勧めします。
キャリアアップに重要な技術士資格
建設コンサルタントで最も重要な資格は技術士です。
技術士は、プロジェクトの管理技術者になるために必要な資格です。
下記のように取得までの道のりは長く、合格率も10%程度と難関です。

出典:日本技術士会「技術士になるには」
取得難易度が高い分、技術士1人につき年間受注できる金額が設定されているなど、持っているだけでも価値のある資格のため、会社側としてはも重宝する人材です。
取得することで担当できる業務の幅が広がり、キャリアの大きな転換点となります。(事実上、転職も容易になります)
そのため建設コンサルタント企業では、技術士の取得を全面的にバックアップする体制が整っているのが一般的です。
実務で役立つその他の資格
RCCM(シビルコンサルティングマネージャ)は、実務経験7年以上で受験資格が得られる重要な資格です。
技術士ほどではありませんが、業務の担当技術者として求められることも多く、若手技術者の中間目標として適しています。
このほか、専門分野に応じて、一級土木施工管理技士や地質調査技士なども取得を検討する価値があります。
ただし、資格取得は急ぐ必要はありません。実務経験を着実に積みながら、計画的に準備を進めることが重要です。
建設コンサルタントに向いている人・向いていない人

建設コンサルタントは、社会インフラの計画から設計まで幅広い業務を担う職種です。
実際の現場経験から、どのような人が活躍しやすいのか、また向いていない可能性が高いのかを具体的にお話しします。
- 建設コンサルタントの学部卒と院卒の年収比較
- 大手建設コンサルタントの学部卒採用状況
- 学部卒技術者の具体的な仕事内容と残業実態
- 建設コンサルタントで学部卒に必要な資格と取得時期
- 建設コンサルタントに向いている人・向いていない人
- 学部卒から管理職までのキャリアパス
建設コンサルタントで活躍できる人の特徴
時間をかけて計画を練り上げることに充実感を感じられる人が、建設コンサルタントで活躍する傾向にあります。
橋梁や道路、河川などの設計は、一つの案件に数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。そのため、長期的な視点で業務に取り組める人が向いています。
また、実務では発注者との打ち合わせや地域住民との合意形成など、多くの関係者と協力して業務を進める場面が多くあります。
チームでの作業を苦に感じない人、むしろ人との関わりを楽しめる人の方が、仕事への適性が高いと言えます。

苦労して設計した構造物を実際に目で見た感動は何度味わってもいいものじゃ
向いていない可能性がある人の特徴
短期間で目に見える成果を求める人は、建設コンサルタントの仕事に物足りなさを感じる可能性があります。
設計した構造物が実際に形になるまでには数年~10年以上かかることも多く、即座に成果が見えにくい仕事だからです。

目の前で構造物が出来上がってくゼネコンとはまた毛色が違うよね
また、一度決めた計画や設計でも、様々な要因で変更を求められることが少なくありません。
そのため、自分の考えを柔軟に変更できない人や、修正作業を面倒に感じる人は、ストレスを感じやすい傾向にあります。
学部卒で成功するためのポイント
学部卒で入社する場合、特に重要なのは継続的な学習意欲です。
業務で必要な知識や技術は、実務を通じて段階的に身につけていきます。
そのため、分からないことを素直に質問できる姿勢や、新しいことを学ぶ意欲が重要になります。(※筆者はこの点こそがコミュニケーション能力というものだと考えています)
建設コンサルタントは、技術士などの資格取得を目指しながら、長期的にキャリアを築いていく職種です。将来を見据えて着実にスキルアップを図れる人が活躍できます。
学部卒から管理職までのキャリアパス

建設コンサルタントでは、学部卒でも実力次第で確実にキャリアアップが可能です。
実際の成長過程と、管理職として活躍している学部卒社員の一般的なキャリアパスを見ていきましょう。
- 建設コンサルタントの学部卒と院卒の年収比較
- 大手建設コンサルタントの学部卒採用状況
- 学部卒技術者の具体的な仕事内容と残業実態
- 建設コンサルタントで学部卒に必要な資格と取得時期
- 建設コンサルタントに向いている人・向いていない人
- 学部卒から管理職までのキャリアパス
入社後の成長プロセス
最初の3年間は、基礎的な実務スキルの習得期間となります。
先輩社員の指導のもと、現地調査や基本的な設計業務を担当します。この時期は、CADによる図面作成や報告書の作成手法など、実務の基本を着実に身につけることが重要です。
5年目以降は、小規模案件の担当者として任されるようになります。発注者との打ち合わせにも参加し、プロジェクトの進行管理も経験します。
この段階で技術士の取得を目指す社員も多く、資格取得と実務経験の両立が求められます。
プロジェクトリーダーへのステップ
入社7~8年目頃になると、中規模案件のプロジェクトリーダーを任されるようになります。(技術士かRCCMを取得済みであることが前提)
技術的な判断に加えて、若手技術者への指導や、工程管理なども担当します。
この時期は、技術力とマネジメント力の両方が試される重要な転換期となります。
主任技術者や管理技術者として案件を取り仕切るようになるのは、一般的に技術士取得後となります。
学部卒の場合、この段階で到達する社員もいます。
技術士の資格を持ち、実績を重ねるこの段階では、もはや学歴は全く関係ないといっていいでしょう。
管理職としての活躍
部署の管理職(グループリーダーや部長)になるのは、通常入社15年目以降です。
この段階では、複数のプロジェクトの統括や、部下の育成、営業活動など、より広い視野での業務が求められます。
学部卒・院卒の区別なく、それまでの実績と管理能力が評価されます。
よくある質問(Q&A)
- Q建設コンサルタントの面接で学部卒は不利になりませんか?
- A
学部卒だからといって面接で不利になることはありません。むしろ、「なぜ学部卒で就職を選んだのか」という質問は、自身の意志や目的意識をアピールする良い機会となります。面接では学歴よりも、土木分野への関心度や、コミュニケーション能力、実務への意欲が重視されます。
- Q院卒と比べて昇進は遅くなりますか?
- A
昇進速度は学歴ではなく、実績と能力で決まります。建設コンサルタントでは、技術士などの資格取得や、プロジェクトでの成果が評価の重要な基準となります。実際に、学部卒でも入社10年目前後で管理技術者として活躍している事例も多くあります。
- Q研究室配属は就職に影響しますか?
- A
研究室の専門分野は、必ずしも就職後の配属と一致する必要はありません。建設コンサルタントでは、構造、地盤、水工、交通など、様々な分野の知識を総合的に活用します。研究室での専門性よりも、そこで培った論理的思考力や問題解決能力が重視されます。
- Q学部卒でも大規模プロジェクトを担当できますか?
- A
はい、担当できます。プロジェクトの配属は学歴ではなく、個人の実務能力と経験に基づいて決定されます。入社後、段階的に経験を積み、必要な資格を取得することで、学部卒でも大規模プロジェクトのリーダーとして活躍することができます。
- Q資格取得のサポート体制はありますか?
- A
多くの建設コンサルタントでは、技術士をはじめとする資格取得を全面的にサポートしています。社内勉強会の開催、受験対策講座の費用補助、合格祝い金の支給など、具体的な支援制度が整っています。学部卒・院卒の区別なく、これらのサポートを受けることができます。
まとめ
本記事で解説してきた通り、建設コンサルタントでは学部卒でも十分に活躍できます。
- 学部卒と院卒で待遇面での大きな差はなく、実力次第で同等以上のキャリアを築くことが可能です
- 資格取得と実務経験の積み重ねが、キャリアアップの重要な要素となります
- 継続的な学習意欲と、コミュニケーション能力が、成功の鍵となります
建設コンサルタントは、社会インフラの整備を通じて地域の未来を創る、やりがいのある仕事です。
学部卒という選択を迷う必要はありません。自信を持って、自分の夢を実現するための一歩を踏み出してください。
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